私が薄毛治療の専門クリニックの門を叩いたのは四十二歳の春でしたがそこに至るまでの数年間はまさに疑心暗鬼と自己嫌悪の毎日であり特に職場における部下たちの視線が私の精神をじわじわと追い詰めていました。中間管理職という立場上人前で話したり会議でプレゼンテーションを行ったりする機会が多いのですがプロジェクターの光を浴びながら説明をしている最中ふと視線を感じると部下たちが私の資料ではなく私の薄くなった頭頂部を見ているのではないかという被害妄想に囚われてしまい話の内容が頭から飛んでしまうことさえありました。特に若い女性社員と話すときは目を見て話してくれているにもかかわらず心の中ではこのハゲ上司と思われているに違いないというネガティブな感情が渦巻き無意識のうちに髪を触って隠そうとしたり不自然な姿勢をとってしまったりと挙動不審になっていたことを今でも恥ずかしく思い出します。また会社の飲み会などで座敷席に座る際も上から見下ろされる位置関係を極端に嫌い常に壁際の席を確保しようと必死になるなど髪の悩みが私の行動範囲や人間関係を狭めていました。そんなある日トイレの個室で偶然耳にしてしまった部下たちの会話が決定的となりそれは直接的な悪口ではなかったもののあの上司最近急に老け込んだよね疲れてるのかなという何気ない一言でしたが私にとっては薄毛=老化=能力低下と見なされているという事実を突きつけられたようで強烈なショックを受けました。仕事のパフォーマンスで評価されるべきなのに髪の毛ごときでマイナスの印象を持たれるのは我慢ならないという怒りにも似た感情が湧き上がりそれまで躊躇していたAGA治療への抵抗感を払拭する原動力となりました。実際に治療を始めてみると最初の数ヶ月こそ初期脱毛の不安などはありましたが半年が過ぎた頃から明らかに髪にコシが生まれ透けて見えていた地肌が埋まっていく過程は失われた自信を一つずつ拾い集めていくような喜びがありました。一年経つ頃には美容師さんからも髪質が変わりましたねと言われるほどになり何より嬉しかったのは部下と話す時に相手の目を真っ直ぐ見て堂々と会話ができるようになった自分自身の変化でした。髪が増えたこと自体も重要ですがそれ以上に自分の中にあるコンプレックスという足枷が外れ仕事に集中できる環境を自分の手で取り戻せたことが最大の収穫だったと感じています。四十代という働き盛りの時期において外見の悩みでエネルギーを消耗するのはあまりにも勿体無いことでありもし私と同じように職場の視線に怯えている方がいるならばそれはあなたの能力の問題ではなく解決可能な身体的な課題に過ぎないことを伝えたいですし治療という選択肢を持つことでビジネスマンとしての寿命も延びると確信しています。今では部下たちとの飲み会も心から楽しめるようになりあの日トイレで聞いた会話は私を変えるための神様からの荒療治だったのだと感謝さえできるほど心に余裕が生まれました。