多くの人が抱く淡い期待、「検査キットで原因がわかれば、あとは自分で対策して、病院に行かずに治せるのではないか」。結論から申し上げますと、検査キットだけでAGAを「治す(発毛させてフサフサにする)」ことは、基本的には不可能です。なぜなら、検査キットはあくまで「状態を知るための道具」であり、「状態を改善するための道具(治療薬)」ではないからです。体重計に乗るだけで痩せることができないのと同じ理屈です。しかし、検査キットの結果を活用して、クリニックに行かずに「進行を遅らせる」あるいは「予防する」ためのセルフケアの精度を高めることは可能です。例えば、遺伝子検査で「AGAリスクは低いが、頭皮の抗酸化力が弱い」という結果が出た場合、AGA治療薬を個人輸入するような危険な橋を渡る必要はなく、抗酸化作用のある育毛トニックを使ったり、ビタミン豊富な食事を心がけたりすることで、抜け毛を減らせる可能性があります。また、毛髪ホルモン量測定で「DHTレベルは正常範囲内」と分かれば、今の抜け毛は季節性のものやストレスによる一時的なものであると判断し、高額な育毛サロンの契約を思いとどまることができるかもしれません。このように、無駄な出費や間違ったケアを回避するという意味では、検査キット単体でも十分に役に立ちます。一方で、検査結果で「AGA高リスク」かつ「DHTレベルが高い」と出た場合、市販の育毛剤やサプリメントだけでこれに対抗するのは、医学的に見て非常に困難です。AGAは進行性の強力なホルモン作用によるものであり、これを食い止めるには、医療用医薬品であるフィナステリドやデュタステリドが必要です。これらは医師の処方が必要な薬です(個人輸入は偽薬や健康被害のリスクが高すぎるため推奨されません)。したがって、本気で「治したい」「生やしたい」と思うのであれば、検査キットの結果を携えて、オンライン診療でも良いので医師の診察を受けることが不可欠となります。最近では、検査キットを購入したユーザーに対して、チャットで医師に相談できるサービスや、アプリを通じて薬を配送してくれるサービスなど、病院に行かずに完結する医療サービスとの連携も進んでいます。「通院の手間や恥ずかしさ」がネックになっているのであれば、こうした次世代型のサービスを利用するのが現実的な解です。検査キットは「ゴール」ではなく、正しい解決策へと導いてくれる「入り口」です。自分の状態を正しく把握した上で、医療の力を借りるべきところは借りる。その賢い判断こそが、自宅にいながらにして薄毛を克服する唯一の道なのです。
AGAクリニックに行かずに検査キットだけで治せるか