「最近、抜け毛が増えた気がする」。そう感じた時、多くの人はシャンプーを変えたり育毛剤を探したりしますが、まずは自分の生活、特に「睡眠」と「食事」を見直すべきです。なぜなら、睡眠不足と栄養不足は、AGAの直接的な原因ではないものの、髪の成長力を著しく低下させ、薄毛を一気に加速させる大きな要因だからです。まず睡眠についてですが、髪の毛は寝ている間に作られます。入眠してから最初の三時間に訪れる深いノンレム睡眠の間に、脳下垂体から「成長ホルモン」が大量に分泌されます。この成長ホルモンは、毛母細胞の分裂を促し、日中に受けた紫外線などのダメージを修復する重要な役割を担っています。しかし、睡眠時間が短かったり、夜更かしをして睡眠の質が悪かったりすると、成長ホルモンが十分に分泌されません。すると、毛母細胞は活動を休止し、髪の毛は十分に育つことができず、細く抜けやすい状態になってしまいます。いわば、工事現場に材料はあるのに、作業員(ホルモン)が来なくて工事が進まないような状態です。次に食事ですが、髪の毛は100パーセント、私たちが食べたものから作られています。髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。極端なダイエットや、カップラーメンばかりの偏った食事でタンパク質が不足すると、身体は生命維持に重要な臓器へ優先的に栄養を回すため、末端組織である髪の毛は栄養失調になります。また、ケラチンを合成するためには「亜鉛」が、頭皮環境を整えるためには「ビタミン類」が必須です。特に亜鉛は、AGAの原因となる5アルファリダクターゼの働きを抑制する効果もあると言われていますが、現代人の食生活では不足しがちなミネラルです。糖質や脂質の摂りすぎは、皮脂の過剰分泌を招き、頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎)を引き起こして抜け毛の原因となります。AGAの遺伝的素因を持っている人が、こうした不摂生な生活を続けることは、火に油を注ぐようなものです。薬でホルモンをコントロールしても、髪を作るための土台となる身体がボロボロでは、効果は半減してしまいます。「寝る子は育つ」と言いますが、「よく寝てよく食べる大人の髪は育つ」のです。規則正しい睡眠と、タンパク質・ビタミン・ミネラルを意識したバランスの良い食事は、遠回りのようでいて、実は最も確実な育毛ケアの一つなのです。
睡眠不足と栄養バランスの崩壊が招く脱毛の原因