AGA治療を始めてから一年。長いようで短かったこの期間を完走できた人は、薄毛の悩みからほぼ完全に解放され、新しい自分を手に入れていることでしょう。治療効果の判定としても、一年というのは重要な区切りとなります。一般的に、フィナステリドやミノキシジルによる発毛効果は、開始から半年から一年の間にピークを迎え、それ以降は「劇的に増える」というよりは「良い状態をキープする」フェーズに入っていくことが多いからです。一年が経過した時点で、多くの患者さんは自分の髪の状態に満足しています。かつてコンプレックスだった生え際や頭頂部は黒い髪で覆われ、温泉やプールに行っても他人の視線が気にならなくなっています。精神的な安定が得られることで、AGAのことは日常の些細なルーチン(薬を飲むこと)の一部となり、悩みの中心ではなくなります。ここで直面するのが、「このまま同じ治療を続けるべきか」という嬉しい悩みです。髪が十分に生え揃った今、発毛を促進する強力な薬(ミノキシジルなど)を使い続ける必要があるのか、あるいはコストを抑えるために薬を減らしても良いのか、という判断です。この時期に行われるのが「維持療法」への移行です。医師と相談の上、例えば今まで毎日飲んでいたミノキシジルを二日に一回に減らしたり、内服薬をやめて外用薬だけに切り替えたり、あるいは抜け毛を防ぐフィナステリドのみの服用に一本化したりといった調整を行います。これを「減薬(げんやく)」と言います。減薬の目的は、身体への負担を減らし、かつ経済的なコストを下げて、治療を長く続けられるようにすることです。ただし、自己判断で急に薬を全部やめてしまうのは厳禁です。AGAの原因であるホルモンの働きは消えていないため、守りの薬(フィナステリドなど)までやめてしまうと、半年も経たずにリバウンドし、一年前の薄毛状態に戻ってしまうからです。一年目の経過観察では、写真を見比べて「ここまで回復した」という達成感を味わうとともに、これからの人生で髪とどう付き合っていくか、長期的な計画を立てる時期でもあります。現状維持で良いのか、もっと上を目指して植毛などを検討するのか。選択肢は広がっています。一年間頑張った自分を褒めつつ、油断せずに「守りのケア」を継続していく決意を新たにする。それが、フサフサな髪を一生モノにするための秘訣なのです。