私が自分の薄毛の原因をはっきりと知ったのは、三十代半ばのことでした。それまでは、「最近ちょっとおでこが広くなってきたかな」「仕事が忙しいから抜け毛が増えたんだろう」と、自分に都合の良い理由をつけて現実から目を背けていました。市販の育毛トニックを使い、シャンプーを高価なものに変えてみたりもしましたが、状況は悪化する一方でした。ある日、同窓会で久しぶりに会った友人に「お前、だいぶキテるな」と冗談交じりに言われたことが決定打となり、私は重い腰を上げてAGA専門クリニックの門を叩きました。そこでの診断結果は、私の予想を超えて残酷であり、かつ希望を含んだものでした。医師はマイクロスコープで私の頭皮を映し出しながら、淡々と説明してくれました。「あなたの薄毛の原因は、典型的な男性型脱毛症(AGA)です。そして、血液検査の結果、遺伝的に5アルファリダクターゼという酵素の活性が高い体質であることがわかりました」。つまり、私の努力不足やシャンプーのせいではなく、持って生まれた遺伝子とホルモンのメカニズムによって、必然的に禿げる運命にあったというのです。父も祖父も薄毛だったため、薄々は感づいていましたが、医学的なデータとして突きつけられると、やはりショックでした。「俺のDNAにはハゲるプログラムが刻まれているのか」と、どうしようもない無力感に襲われました。しかし、医師はこう続けました。「原因が明確なAGAであれば、医学的なアプローチで治療が可能です。原因物質であるDHTの生成を抑える薬と、発毛を促す薬を使えば、高い確率で改善します」。この言葉は、私にとって暗闇に差す光でした。原因がわからない恐怖から、原因に対処すれば良いという前向きな気持ちに切り替わったのです。それから私は、処方された内服薬を毎日欠かさず飲み始めました。最初の数ヶ月は効果が目に見えず不安になることもありましたが、「今は体内で酵素と薬が戦っているんだ」と自分に言い聞かせました。半年が過ぎた頃、明らかに抜け毛が減り、生え際に産毛が生えてきた時の感動は忘れられません。原因を知ることは怖いことですが、それは解決への第一歩でもあります。もし私が原因を知ろうとせず、自己流のケアを続けていたら、今頃はもっと進行していたでしょう。薄毛に悩むすべての人に伝えたいのは、恐れずに専門医の診断を受けてほしいということです。敵の正体さえわかれば、現代医学にはそれに打ち勝つ武器が用意されているのですから。