今回は、毛髪と頭皮の専門家である毛髪診断士の先生にお話を伺い、多くの人が悩む側頭部の薄毛について、その真実と正しい向き合い方を探ります。まず、読者から最も多く寄せられる疑問は、「側頭部の薄毛はAGA（男性型脱毛症）なのでしょうか？」というものです。先生によると、AGAは主に前頭部と頭頂部に作用する男性ホルモンの影響で起こりますが、進行パターンによっては側頭部の上部まで薄くなるケースも確かに存在するとのことです。しかし、側頭部だけが顕著に薄くなる場合は、他の原因も疑うべきだと指摘します。例えば、常に同じ箇所で髪を強く結ぶ習慣がある女性に見られる「牽引性脱毛症」や、自己免疫疾患の一種である「円形脱毛症」が側頭部に発症するケース、あるいは脂漏性皮膚炎などの頭皮トラブルが悪化している可能性も考えられます。次に、「自分でできるセルフケアの限界はどこですか？」という質問に対しては、頭皮環境を整えるという観点から、良質なシャンプー選びや頭皮マッサージは有効であるとしながらも、それが発毛に直結するわけではないと釘を刺します。特に、明らかに抜け毛が増えたり、地肌の透け感が急速に進行したりするような場合は、セルフケアに固執せず、早期に皮膚科や専門クリニックを受診すべきサインだと語ります。専門機関では、まずマイクロスコープで頭皮の状態を詳細に確認し、問診を通じて生活習慣や遺伝的背景を把握した上で、原因を特定します。その上で、内服薬や外用薬による医学的治療、あるいは生活習慣の指導など、個々の状態に合わせた最適なアプローチを提案できるのが強みです。専門家の診断を受けることは、いたずらな不安を解消し、正しい情報に基づいて着実な一歩を踏み出すための、最も確実な方法と言えるでしょう。