僕が自分の髪に異変を感じ始めたのは、大学3年生のころだった。周りの友人たちはパーマをかけたり、明るい色に染めたりしてヘアスタイルを謳歌しているのに、僕だけがシャンプーのたびに排水溝にたまる抜け毛の量に怯えていた。成人式で撮った写真と今の自分を見比べると、生え際が明らかに後退している。まだ22歳。人生はこれからだというのに、僕の頭上には、年齢不相応の暗雲が垂れ込めていた。「若いから、まだ大丈夫」。そう自分に言い聞かせようとしても、現実は日に日に深刻になるばかり。インターネットでAGAという言葉を知り、治療法があることを知ったが、同時に「若いと治療が難しい」といった情報も目に入り、不安は募る一方だった。クリニックのドアを叩くのは、自分の「負け」を認めるようで、たまらなく怖かった。しかし、悩み続けていても髪は戻ってこない。僕は意を決して、無料カウンセリングの予約を入れた。診察室で医師に頭を見せるのは、裸を見られるよりも恥ずかしかった。だが、医師は僕の年齢を馬鹿にすることなく、真摯に話を聞いてくれた。「20歳を過ぎているので、治療は始められます。若いからこそ、早く始めることで進行を食い止め、高い効果が期待できますよ」。その言葉は、暗闇の中に差し込んだ一筋の光のようだった。僕は内服薬による治療を開始した。治療開始から数ヶ月、初期脱毛という辛い時期もあったが、半年が経つ頃には、抜け毛は明らかに減り、生え際に短い産毛が生えてきたのを自分の指で確認できた。年齢は、治療を諦める理由にはならなかった。むしろ、早く行動するための強力な動機になった。今、僕は鏡を見るのが怖くない。22歳で下したこの決断は、僕の人生で最も賢明な選択の一つだったと、胸を張って言える。