「秋になると抜け毛が増える」というのはよく聞く話ですが、これが自然な生理現象なのか、それともAGAの進行によるものなのかを見分けることは非常に重要です。確かに、人間にも動物の換毛期のようなリズムがわずかに残っており、夏の紫外線ダメージや自律神経の乱れなどの影響で、晩夏から秋にかけて一時的に抜け毛が増える傾向があります。これを「季節性脱毛」と呼びます。しかし、この季節性の抜け毛とAGAの抜け毛には、明確な違いがあります。まず、「期間」の違いです。季節性の抜け毛は一時的なものであり、通常は一ヶ月から二ヶ月程度で落ち着きます。抜けた後にはすぐに新しい髪が生えてくるため、トータルの毛量が大きく減ることはありません。一方、AGAによる脱毛は季節に関係なく一年中続きます。そして、一度始まると自然に止まることはなく、徐々に、しかし確実に進行していきます。「もう秋も終わって冬になったのに、まだ抜け毛が減らない」という場合は、季節のせいではなくAGAを疑うべきです。次に、「抜ける部位」の違いです。季節性脱毛や、ストレスなどが原因の休止期脱毛は、頭全体からまんべんなく抜けるのが特徴です。そのため、特定の場所だけが薄くなるというよりは、全体のボリュームが少し減ったかな、という印象になります。対してAGAは、前述の通り前頭部や頭頂部といった特定のエリアから集中的に抜けていきます。枕元に落ちている毛が、後頭部の毛に比べて前髪付近の細い毛が多いようであれば、それはAGAのサインです。そして何より重要なのが、「抜け毛の質」です。季節性の抜け毛は、寿命を全うして抜けた「棍毛(こんもう)」が主体であり、太くてしっかりした毛が多いです。しかし、AGAの抜け毛には、成長途中で抜けた細く短い毛(軟毛)が多く含まれます。秋だからといって、産毛のような未熟な毛が大量に抜けることは通常ありません。もし、季節の変わり目に抜け毛が増えたと感じたら、その中身をよく観察してみてください。太い毛ばかりであれば、一時的な頭皮の疲れやサイクルの同調によるものなので、栄養を摂ってしっかり寝れば回復するでしょう。しかし、細い毛が混じっていたり、生え際などの特定部位が気になったり、あるいは数ヶ月経っても抜け毛が収まらなかったりする場合は、季節のせいにして放置せず、専門家に相談することをお勧めします。「秋だから」という言い訳は、AGAの進行を見逃す危険な隠れ蓑になり得るのです。