「AGA治療はずっと続けなければならない」と聞くと、五年後、十年後の自分がどうなっているのか、不安になる人もいるでしょう。「薬が効かなくなるのではないか(耐性)」「薬の害が蓄積するのではないか」。しかし、長期的な臨床データや多くの患者さんの経過を見ると、それほど悲観する必要はないことが分かります。まず、薬の効果についてですが、フィナステリドなどのAGA治療薬に耐性がついて効かなくなるということは、医学的には考えにくいとされています。実際、十年以上服用を続けている患者さんの多くが、フサフサな状態を維持し続けています。ただし、ここで考慮すべきなのは「加齢」という要素です。AGAの進行を薬で抑えていても、人間は誰でも年を取れば髪の毛が細くなり、全体的なボリュームは減っていきます。十年経てば十歳年を取るわけですから、二十代の頃と全く同じ状態をキープするのは不可能です。しかし、治療を続けている人は、治療をしていない同年代の人に比べれば、圧倒的に多くの髪を残せています。つまり、長期的な経過としては、「右肩上がりの回復期」を経て、「緩やかな平行線(維持期)」に入り、その後は「加齢に伴う緩やかな減少」へと移行しますが、その減少カーブは治療をしていない場合よりもはるかに緩やかです。健康面に関しても、十年以上の長期服用による重篤な健康被害の報告は極めて稀です。定期的な健康診断を受けていれば、過度に心配する必要はありません。むしろ、長期治療の課題となるのは、結婚や子作り、病気など、ライフステージの変化との兼ね合いです。例えば、妊活のために一時的にフィナステリドを休薬する時期があるかもしれません。そうした人生の節目ごとに、医師と相談しながら柔軟に治療方針を調整していくことが求められます。十年後のあなたは、きっと薬を飲むことが生活の一部となり、髪があることを当たり前のように享受しているはずです。そして、「あの時あきらめずに治療を続けてよかった」と、過去の自分に感謝する日が来るでしょう。長期的な経過とは、単に髪を維持することだけでなく、髪の悩みから解放された豊かな人生を維持することでもあるのです。