AGA専門クリニックの診察室では、日々、様々な年齢層の患者様と向き合っています。10代の学生さんから、80代のご高齢の方まで、その悩みは共通していても、私たちが提案する治療アプローチは、その方の年齢によって大きく異なります。年齢は、AGA治療計画を立てる上で、進行度と並んで最も重要な判断材料の一つなのです。例えば、20代前半の若い患者様が来院された場合、私たちはまずAGAの進行を食い止めることを最優先に考えます。この年代はAGAが最も進行しやすい時期であり、ここでしっかりと食い止められるかどうかが、その後の長い人生のQOLを左右するからです。フィナステリドやデュタステリドといった内服薬を基本に、必要であればミノキシジルを組み合わせ、積極的に改善を目指します。一方、40代、50代の中年期の患者様の場合は、ご本人がどこまでの改善を望んでいるのか、というゴール設定が重要になります。現状維持で満足なのか、それとも20代の頃のような状態を目指したいのか。その希望と、治療にかけられる費用や時間とのバランスを取りながら、最適な治療法を一緒に模索していきます。そして、60代以降の患者様に対しては、何よりも「安全性」を最優先します。持病の有無や服用中の薬を詳細に確認し、体に負担の少ない治療法を選択します。治療のゴールも、劇的な発毛よりは、抜け毛を減らして穏やかな状態を保つことに主眼を置くことが多いです。また、10代の患者様に対しては、内服薬の処方は原則として行いません。まずは生活習慣の指導や、栄養面でのアドバイス、そして何よりも精神的なサポートを通じて、20歳になるまで安心して過ごせるような環境作りをお手伝いします。このように、私たちは単に薬を処方するのではなく、患者様一人ひとりの年齢という人生のステージに寄り添い、その方に最もふさわしい医療を提供することを心がけています。