AGA治療は、一度始めると長期的に継続する必要があると言われます。そこで浮上するのが、「一体、何歳までこの治療を続けるべきなのか」という、治療の「やめどき」に関する問いです。下限年齢だけでなく、この上限、あるいは出口戦略について考えることは、AGA治療という長い旅路を歩む上で非常に重要です。まず理解しておくべきなのは、AGA治療に「完治」という概念はないということです。治療薬は、あくまで症状の進行を「抑制」している状態です。そのため、自己判断で服用を中止すれば、再びAGAは進行し始め、数ヶ月で治療前の状態に戻ってしまう可能性が高いのです。この事実を前提とすると、治療のやめどきは、医学的な上限年齢によって決まるというよりは、むしろ個人のライフプランや価値観によって決まると言えます。一つの考え方として、「自分が髪の状態を気にしなくなるまで」続けるというものがあります。例えば、仕事もリタイアし、人前に出る機会も減り、容姿へのこだわりが薄れてきたと感じた時点で、医師と相談の上で治療を終了する、という選択です。これは、QOL(生活の質)の観点から非常に合理的な判断と言えるでしょう。また、経済的な理由も大きな要素です。自由診療であるAGA治療は、継続的な費用負担が伴います。退職して収入が減少したタイミングなどで、治療の継続が負担になると感じれば、それも一つのやめどきかもしれません。ただし、急に全ての薬をやめるのではなく、医師の指導のもとで徐々に薬の量を減らす「減薬」を試みるという選択肢もあります。これにより、急激なリバウンドを防ぎながら、緩やかに治療をフェードアウトさせていくことが可能です。AGA治療のゴールは人それぞれです。何歳まで、という数字に縛られるのではなく、自分の人生のステージと向き合い、満足できる髪の状態でいられる期間を、医師と共に設計していく。そんな柔軟な視点を持つことが、後悔のない治療の終え方に繋がるのです。