シャンプーの時や朝起きた時の枕元で、抜け毛の量にドキッとした経験は誰にでもあるでしょう。しかし、その抜け毛が単なる生理現象なのか、それともAGA(男性型脱毛症)のサインなのかを見分けることは、早期対策への重要な第一歩となります。まず理解すべきは、健康な人でも一日に50本から100本程度の髪は自然に抜けるということです。これはヘアサイクルと呼ばれる髪の生まれ変わりの周期によるもので、役目を終えた髪が抜け落ち、新しい髪が生える準備をしている証拠です。問題は、その抜け毛の「質」と「量」です。正常なヘアサイクルで抜ける髪は、ある程度の太さと長さがあり、毛根部分が棍棒のようにふっくらしているのが特徴です。これは、髪が成長期を十分に経て、寿命を全うしたことを示しています。一方で、AGAによる抜け毛は、その様相が異なります。AGAは、ヘアサイクルの成長期を短縮させてしまうため、髪が十分に太く、長くなる前に抜け落ちてしまいます。そのため、AGAが原因の抜け毛は、細くて短い、いわゆる「軟毛」が多くなる傾向があります。抜けた髪の毛を指でつまんでみて、弱々しくハリやコシがないと感じる場合は注意が必要です。また、毛根部分を確認した際に、白く濁った皮脂が付着していたり、毛根自体が小さく痩せていたりするのもAGAのサインの一つです。さらに、抜け毛が特定の部位、特に頭頂部や前頭部の生え際から集中して増えている場合も、AGAの典型的なパターンと言えます。日々の抜け毛一本一本に過度に神経質になる必要はありませんが、明らかに細く短い毛が増えてきた、特定の場所だけ地肌が透けて見えるようになってきたと感じたら、それは体が発している危険信号かもしれません。その違いに気づくことが、専門家への相談を考えるきっかけとなるのです。