日本でAGA治療が保険適用外であることは広く知られていますが、それでは海外ではどうなのでしょうか。この疑問を探ることは、日本の医療制度を客観的に見つめ直す良い機会となります。結論から言うと、多くの先進国においても、AGA治療は日本と同様に美容目的と見なされ、公的医療保険の対象外となるのが一般的です。例えば、アメリカでは民間の医療保険が主流ですが、AGA治療のような審美的な処置はほとんどの場合、保障の対象外です。患者は高額な治療費を全額自己負担で支払うか、専門のローンを利用するのが通例となっています。ヨーロッパ諸国、例えばイギリスの国民保健サービス(NHS)やフランスの社会保障制度でも、AGA治療はカバーされていません。これらの国々でも、医療資源は生命に関わる病気や緊急性の高い治療に優先的に配分されるべきだという考え方が根底にあります。しかし、国によっては若干の違いも見られます。隣国の韓国は美容大国として知られていますが、AGA治療薬は保険適用外です。ただし、競争が激しい市場のため、比較的安価に治療を受けられる環境があると言われています。一方で、一部の国や特定の条件下では、例外的なケースも存在します。例えば、重度の火傷や事故による脱毛、あるいは他の疾患の副作用として生じた脱毛症の治療に関しては、再建医療の一環として保険が適用される場合があります。しかし、これは遺伝や男性ホルモンを主な原因とするAGAとは明確に区別されます。このように世界各国の状況を比較してみると、AGA治療を公的保険でカバーすることは、医療財政や制度の理念上、非常にハードルが高いことが分かります。日本だけが特別なわけではなく、世界的な共通認識として、AGAは自己投資の領域にあると位置づけられているのが現状と言えるでしょう。